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【2017/11/25 03:10 】 |
Y-10(1)




澄んだ空、広がり行く雲。
産声を響かせる目覚めたばかりのセミ達。

夏。

一言で言い表せばそうであるが、年に一度の季節にそんな失礼は許さない。
夏は特に、良し悪しではあるが、「暑い」という特別な感覚を、人間に存分に分け与えてくれる。
人間。
人間以外もそうだ。
他の動物達にもそうだ。
ヒトの形をした"彼女"も例外ではない。

城山和慰与(しろやまわいと)本名。
非常識なカミサマの悪戯で、前世の耳を保ったまま転生してしまった雌の狼。
父、城山勇太と母、城山明菜に育まれ、現在若干14歳、中学二年生。
本当ならば、学生の醍醐味である夏休み真っ最中の楽しい時期であるが、彼女にはそうもいかない事情があった。
それは、
彼女がアイドルだと言うことである。
耳を疑うかもしれないが、狼の耳を持つその少女は、紛れもなく、今や知らない
人はいない、と、言ってしまいたくなるほど、人気のあるアイドルだと言うこと
は真実である。
これは、そんなヘンテコな彼女と、それを取り巻く世界との、なんとも言いがた
い物語である。

さて、一通り自己紹介が済んだところで、その城山和慰与さんはどこにいるのか
と言うと。
おや、いた。
都会のビル街を、歩いている。
鼻から顎まである大きなマスクに、顔一面に対して、残りの鼻以外がすべて隠れるような大きな赤黒いサングラスをかけ、少し頭を垂れて歩いている。
あ、それからチャームポイントの耳は大きめのキャップで見事に隠されているというのも付け加えておこう。
なにはともあれ、なんとも奇妙な光景だと言うことには変わりない。
いや、むしろ、ある意味スペシャルな彼女が何故こんなにも自然と人間界に溶け込んで、さも当たり前のように歩いているのか、そこもまた不思議な気もする。

ちゃんと前を見えているのかさえ定かではないその格好で、一歩二歩と、アメリカチックかつ煉瓦のような赤みのかかったコンクリートの上を歩く。
ジリジリと、ちょっと前に始まったばかりの太陽光が熱を帯びて、それにコダマするかのようにコンクリートの赤も熱を発する。
和尉与はホットパンツに、半袖のTシャツを着用し、なんとも涼しげな格好には見えるが、顔の着用率もあってか、かなり汗は出ている。
だらしいその歩き方にもすごく暑さの影響を受けていることがうかがえる。
あの二つの織り成す暑さの前には涼しさなんて皆無な様な気さえ起こさせる。
和慰与「…暑い。」
そりゃ、そうだ。
そんな風に顔を覆っていて涼しいわけがない。
暑さに気をとられながらも、街の喫茶店を過ぎ、パン屋を過ぎ、開店前のラーメン屋を過ぎていく。
様々に店が立ち並び、人もパラパラと見受けられる。
スーツ姿のサラリーマンは、さすがにいない時間帯ではある。
だが、夏休みということもあって、遊びに行くであろう若い団体が、今の大半を占めている。
そんな団体などを横目で見つつ、和慰与は、目的地へと足を急がせた。
午前9時42分。
城山和慰与の忙しい一日が始まる。

私は、若干の熱気を、露出している鼻、足、腕で撥ね飛ばしながら歩いている感覚に見回れている。
太陽とアスファルトから交互に発せられる熱気は、私の歩くスピードに合わせて、熱風を作り出しているよう。
暑さの原理はわかっていても、理屈は誰にもわからないと思う。
夏は嫌じゃないけどね。
今年で14年目になるし、いい加減になれてきた。
あ、14年目っていうのは、人になって暑さを感じた年数だっていった方がいいのかな。
私には、どうやら転生前の記憶があるらしく、不意にその記憶を思い出すことがある。
デジャビュって訳じゃないよ。
ハッキリ覚えてて、何度もヒトを忘れることがあったくらい。
生肉を食べそうになったときが一番最悪だったかな…。
でも、今は、昔の自分と、人というものを、冷静に差別化出来る。
ヒトっていう器になれてきただけだって言えばそうだけど、私は、このヒトが私である感覚を楽しんでいるのかもしれない。

あ~、ダメだ。

暑いと、余計なこと考えてるだけで、体力が奪われる…。
早いとこスタジオに着いて、涼しい部屋でのんびり冷たいジュースでものみたいな。
そんなことを考えながら歩いてると、これって少しは夏を楽しんでるんじゃないかと、一人でにんまりしてしまいそうになる。
危ない、危ない…。


今向っているスタジオに行く際は、いつもこんな感じ。
一人で街並みを楽しみながら歩いてる。
マネージャーさんがたびたび車で連れて行ってくれる、ようなことを言っては来るけど、正直歩いて行くことの楽しさには、車のクーラーでもかなわない。
クーラーききすぎてると、逆に寒いしね。

ふりふりの服を身にまとっている、背の低いかわいい女性の店員さんがいるブティックとすれ違う。
その店員さんは、一瞥するといつも自分より2倍の背丈のあるショーウィンドウディスプレイの大きな窓を拭いている。
そして、なぜか必ず私と目が合うみたい。
目があってもお互い特に何もない。
私がサングラスをしているから、目が見えないからかもしれないけど…。
そんなにあやしいかな…?

そんなブティックをすぎると、テレビが山のように積んである電気屋のそばを通る。
積んであるっていう表現はおかしいかな、ちゃんと陳列はされてるし。
ショーウィンドウに飾られてるっていう表現が一番しっくりくるかも。
ショーウィンドウに飾られているそれらのテレビは、今人気のドラマだったり、野球だったり、バラエティ番組だったり、時にはアイドルのライブでさえも流していたりする。


byやぁこ

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【2011/09/28 00:18 】 | 小説(オリジナル) | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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